
ある日の昼下がり、鳳凰と織姫は墓地に来ていた。
今日は鳳凰の父、南雷円(みなみ らいえん)とその奴隷、カリ―ノ・ソレッタの命日だった。

「父さん…カリーノさん…今年も来たよ………」

「ママ…旦那さま………こっちはうまくやってるから安心して………」

「………………あれから、もう二年になるんだな。二人とも、元気でやってる?あまりカリーノさんを泣かせ
たらだめだよ、父さんは昔から女好きだったんだから」

「さ、二人の好きだったバラ…今年も持ってきたで〜す………」

「……………じゃ、そろそろ行くよ。また来年な、二人とも………」
そして、二人は墓地を後にした。
シャンゼリゼ通り。

「さて、と…茶でも飲んで帰るかな………お?」

「?どうしたですかー、ご主人さま」

「悪い、ちょっと待っててくれ。久しぶりに懐かしいのに出会ったんでな」
鳳凰は一軒のカフェにいる女性の後ろにそっと忍び寄ると…

「ラリア〜〜〜〜〜〜ットぉ!!!!!!!!」
どげすっ!!

「げふっ!………………」

「………あ、あら?ど、どったの…?」
「………このようなことをする男など…ただ一人…………」

「あ…き、気付いた?」
「ほ〜〜う〜〜お〜〜う〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
突如、ラリアットを食らった女性が斧を持って鳳凰に襲いかかってきた。

「だぁぁっ!ま、待てよグリたん!!」
「その呼び名を呼ぶでないわぁぁぁぁっ!!!!」

「なぁぁぁぁぁっ!!!!!お、織姫、助けてくれよ〜!」

「………天罰てきめんで〜す」
「おわぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
そして、女性が暴れたのとは別のカフェにて…
「まったく…貴様は普通に挨拶ができぬのか」

「いや、お前が斧振り回すから騒動になったんじゃないか」
「貴様がいきなりラリアット食らわすからだろうが!」

「そうそう、ご主人さまが悪いで〜す」

「…じゃあ、『だ〜れだ?』だったらよかったのか?」

「貴様の場合、触るのは胸だろう………結果は同じだ」

「………で、この人とはどういう関係だったですか〜?」

「ああ、グリた…いや、グリシ―ヌはブルーメール家の一人娘でな。しょっちゅう家を抜け出しては俺と遊ん
でたんだよ」

「ふ〜ん…不良貴族だったですね〜」

「こいつよりはマシだ…こいつは私の…私の…………」

「…?」
「私のファーストキスを奪ったのだ!!!」

「え〜〜〜〜〜!?」
「しかも、その三週間後には…し…し…しょ、しょ………」

「しょ…?まさか………」
「そうだ、こいつは私の処女を奪ったのだぞ!!!!!!!!!!!!!!」

「な…ホントなんですかご主人さま!?」

「………………うん」

「……………………………………………………………………………」

「い、いやね、こいつが八歳の時に引っ越すとか言うからさ…それで、前日に俺の家に泊まってさ…一緒に寝
てたら…その………勢いで…………」

「…………………………………………………………………………………………………………最低」
「まったくだ…あの時は裂けるかと思ったのだぞ………しかも膣に出しおって………」

「し、仕方ないだろ…俺だって、まだ慣れてなかったんだから………」

「………慣れてなかった?」

「あ………」
「貴様…あの時私が初めてだと言ってなかったか?」

「え、えと…うんと………てへっ♪」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

「ぎゃあああっ!お、落ちついてくれグリ!!」
「私の処女を…私の初めてを返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」

「……………当然の報いで〜す」
その後、カフェが阿鼻叫喚の場となったのは言うまでもない………
ブルーメール邸。

「しかし…お前一体いつ帰ってきたんだよ」

「去年だ………ところで、怒りのあまり忘れてたが、その奴隷は何者だ?」

「ああ、織姫か…俺の可愛い奴隷だよ。妹みたいなもんさ」

「……………しかし、懐かしいな。あれからもう八年になるとはな」

「そうだよな…………で、親父さんはどうしてる?」

「…三年前に他界した。情けない死に方だった………アルコール中毒による心臓発作だった………そういう貴
様はどうだ?」

「お前と同じ、二年前に亡くなったよ…同じ父親でも、これだけ死に方が違うとはな」

「…時に、鳳凰。貴様…裏でポルノ女優の調達人をしているそうだな」

「な…どうしてそれを!?」

「………頼む、私をポルノ女優として紹介してくれ」

「お、お前………何を言って………」

「理由は聞かないでくれ…頼む、この通りだ……………」

「…………………………………分かった、日付は追って報告する」
「………………」
「…………………じゃあな」

「ああ…感謝する」

「ご、ご主人さま!どうして…幼馴染みのはずじゃなかったんですか〜!?」

「…………………」

「あの人、監督にいぢめられるに決まってるで〜す!絶対に発狂してしまうで〜す!!」

「………あいつ、泣いてた……………」

「え?」

「泣いてたんだよ…あいつは………」
「…………」

「それに、あいつの目がマジだった…そこまでして俺に頼んでるんだ、俺に断る理由はない」

「で、でも………」

「言わなくても分かってる…つらいんだよ、俺だって…………」

「ご主人さま……………」
そして、数日後…
この日は、なぜかギルモアが監督をすることになった。
「彼女か、君が言っていた女優は…名前は…確か『ブルーアイ』だったかな?」

「………………」
「………鳳凰、彼女の身辺を調べてみたんだがな…彼女の父親が多額の借金を負っていたようだ」

「な…調べたんですか、ギルモアさん!?」
「………それで、だ。リッシュ伯爵、君と同じ金貸しをサイドビジネスにしている、からの借金がほとんどだ
った。そのために、彼女は借金を払うツテを探してた。そこに来たのが………」

「俺だった、ってわけですか…………」
「………今だったらやめられるぞ」

「…………いえ、あいつの覚悟を無駄にしたくありません」
「そうか………始めるぞ」
相変わらずの黒のベニヤ板のみの簡素なセットに、グリシ―ヌが男優に見下される形でビニールマットの上に
座っている。
「へっへっへ…覚悟してもらおうか、えぇ?生意気そうなツラぁしてるじゃないか…お仕置きが必要みたいだ
な。それも、とっておきなやつをな………」

「…………………」
「おっと、そんなに睨んでも無駄だぜ…お前は抵抗なんざ出来ないんだからな!」
男優がグリシ―ヌを押し倒し、ローションを全身にたっぷりと塗りたくった。

「な…何をする………」
「決まってるだろ…俺に奉仕するのさ………こうやってな」
男優はマットの上に寝転がり、グリシ―ヌを自分の上に密着させるように乗せた。
「さ、動いてもらおうか」

「………………………」
グリシ―ヌはぎこちなく男優の体の上を上下に動いた。
「…なかなかいいな、お前ホントは素人なんかじゃなくてソープ嬢なんじゃねぇか?」

「そ、そんなことは………」
「まぁいい…じゃ、こっちも楽しませて………」
男優は隠しておいたバイブをそっと持ち…
「もらうとするか!」
ずぶっ

「ひぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
グリシ―ヌのアナルに押し入れた。
「ローションつけてるだけあって少しはスムーズだが…まだきついな。オラ、休むな!」
グリシ―ヌが動くたび、バイブがグリシ―ヌのアナルに食い込んで行った。

「い、いやぁ…痛い、痛いのぉ………」
「仕方ねぇな…ほら、これでいいだろ!」
男優はグリシ―ヌのアナルにバイブを奥まで押しこんだ。

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
「ん?…血か。どっか切れたみたいだな…まぁいいか」
男優はさほど気にする様子もなく、バイブのスイッチを入れた。

「ひぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!やめろぉ…う、動かすな…」
「ぁ?それが人にものを頼む態度か?」

「や、やめて………くだ………さ………い………」
「…ちっ、しょうがねぇな。ま、そろそろクライマックスにうつるとするか」
男優はバイブを抜き取り、スタッフから一本の浣腸用注射器を受け取った。
「こいつに何が入ってるかわかるか?…精液だよ」

「な…………」
「しかも、いろんな人種のが混じってるからな…正直どんなガキが生まれるか分からない」

「そ、そんな………」
「さ…てめぇに世継ぎを生ませてやるぜ………」
男優はグリシ―ヌの秘所に注射器の先を押し入れた。

「や、やめろ…やめろぉ………」
男優は答える様子もなく、精液を注入した。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
「まだまだ、あと半分も残ってるぜ」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!!!!」
「っと、これで全部…ま、どんなガキが生まれるか楽しみにするんだな…………」
全てが終わった後、グシリ―ヌは虚空を眺めていた………
何も考えず、考えることができず、ただじっと虚空を眺めていた……………。
スタッフや男優が去ったあとも、二人は席を立たなかった。
「………これでよかったのか?」
「はい………あいつが望んだことでしたから…………」
鳳凰はうつむき、体を振るわせながら涙を流していた。
「……………」
「…ギルモアさん………俺は………俺は………あいつが狂うのを………見たくなかった………でも…あいつ
の涙が…目が………頭から離れなかったんですよ………」
「………………鳳凰、今ならまだ間に合うかもしれないぞ」
「…………え?」
「鳳凰、お前には超能力があるだろう…あの強欲なサーカス団長も、それで殺したんだろ?」
「…………」
「お前は他にも、人格を変える力も持っている…もしかしたら、元に戻すことも可能かもしれない」
「…自信がありません………」
「やってみなければ分からないだろう?」
「……………」
鳳凰はうなづき、グリシ―ヌの方へ向かった。
「グリシ―ヌ…待っててくれよ………」
鳳凰は右手をグリシ―ヌのこめかみに当て、全神経を右手に集中させた。
すると、鳳凰の右手からまばゆい光が放たれた。

「…………う、う〜ん…………」
「ぐ…グリシ―ヌ?」

「…ほう…おう………あ〜っ!!」

「!?」

「なんだこの状況は!そこら中ヌメヌメしてるではないか!!」

「お前…覚えてないのか?」

「………いや、少しからかってみただけだ」

「こいつは………」

「………鳳凰、私を助けてくれたのだな………礼をいうぞ」

「グリシ―ヌ………」

「な…どうしたのだ?」

「グリシ―ヌぅぅぅぅぅ!!!!」

「だぁっ!や、やめぬか暑苦しい!ただでさえヌメヌメしておるというのに!!」
(………さて、邪魔にならないうちに帰るとするか)
ギルモアは、そっとスタジオを後にした…。
数日後、鳳凰邸。

「♪〜♪♪〜」

「?どうしたですか〜ご主人さま」

「ああ、これから伯爵の家に行くんでな」

「ふ〜ん…」

「そういうわけで、今日は可愛がってやれないんだわ。悪いな」

「別にいいで〜す。ご主人さまが愛してくれてるのは十分承知で〜す」

「こいつ…ま、いい。今日はゆっくりしてていいぜ」

「ハイで〜す」

「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃいで〜す」
リッシュ伯爵邸。
「こんばんは、伯爵。私の幼なじみが世話になったようで………」
「いやいや…しかし、世界に名を響かせるサウス=コーポレーションの会長にお会いできるとは………で、ご
用件は?」
「…グリシ―ヌに金を貸しているそうですね」
「…知っていましたか」
「ええ…それで、あいつの借金をチャラにしてほしいんです」
「…無理なご相談ですな」
「しかし、金を借りたのはあいつの…いや、彼女の父親でしょう?もうこの世にいない人間の責任をどうやっ
て取らせるというのです?」
「父親の借金は娘の借金…あなたも金貸しを営む身なら十分承知してるでしょう?」
「…では、こちらの申し出は受け入れられないと?」
「鳳凰さん…なぜあんな虫けらに情を入れるのです?」
「今、なんと?」
「あんな没落貴族などとは縁を切れと言ったんですよ…あなたにはもっとふさわしい相手がいるはず、それを
あんな虫けらと付き合っていてはあなたの評判も………」
「………伯爵、あんた自分で何を言ってるのか分かっておられますか?」
「…?」
「あいつは立派な貴族ですよ…あんたと違ってな」
「…聞き捨てなりませんな」
「もう一度言おう、虫けらはあんたの方だよ、伯爵」
「…私を虫けら扱いするとは、あなたも命知らずのようだな」
「………伯爵、あんたは汚れすぎた。もう一度人生をやり直したほうがいいんじゃないか?」
「な、何をい…」
そう言うと、鳳凰はドミクールの時のように右手を伯爵に向けた。
「な、なんだ…急に頭痛が………」
「痛みますか?でも、もう少しの辛抱ですよ…もうすぐ、あなたは生まれ変わるんですからね」
「な、何を…」
「大丈夫、全ての罪を洗い流すだけですよ…」
「あ、あ…い………意識………が…………」
「伯爵…今度会う時はもう少しきれいな心になってくださいよ」
「あぁ…………あ…………た、たすけ………て……………」
そして、リッシュ伯爵は倒れてしまった。

「………アディオス、エテナルメンテ」(永遠に、サヨナラ)
翌日、鳳凰邸。
「『リッシュ伯爵、赤ん坊に逆戻り!』、か………まぁ、当然といえば当然だがな」
そうつぶやきながら、鳳凰は横で日向ぼっこをしながら寝ているエリカに目をやった。
「…俺も、お前みたいになりたいよ………楽になりたい」
だが、それが叶わぬ願いなのは十分承知していた。
「…分かってるよ、父さん。俺は逃げないよ………安心しててくれ」
北大路花火編に続く